BLOG

デザインでモノが売れるのか。という問いに対する答えは?

森島酒造さんの「森嶋」が売れています。

元々ここ数年日本酒全体の売り上げが低迷するなかで、

さらにコロナの影響があり、居酒屋など日本酒を提供する飲食店の販売量が大幅に減った、と言う現実にも関わらず「森嶋」は売れ続けているそうです。

例年なら9月まで販売する予定で仕込んでいたお酒が、6月の時点でもう全て完売しているそうです。

まさに絶好調。

 

なぜ売れているのか? 

「売れている理由はラベルのデザインと発売にあわせてリニューアルしたwebサイトです。だって、味は今までと変えてないんだから」

と専務で蔵元杜氏の森嶋正一郎さんは言います。

 

 

森嶋は、昨年秋に誕生した森島酒造の新しいブランド。それまで長きにわたり森島酒造の看板ブランドは「大観」でした。

蔵元杜氏の森嶋専務は来たる新ブランド立ち上げの為に、10年かけて「大観」の味を変えていったそうです。

そして新ブランド「森嶋」の誕生にあわせて、「大観」を縮小して「富士大観」と改め、

10年かけて極めた味をそのまま「森嶋」ブランドに移行しました。だから「味は変えていない」と。

 

それまで森島酒造さんの都内の卸し先のお得意さん(販売店さん)の口癖は「森ちゃんの酒は上手いのになんで売れないんだろうなぁ?」だったそうです。

 

では本当に、商品の名前を変えて、パッケージを新しくデザインし、webをリニューアルすれば「モノ」は売れるんでしょうか?

手前味噌ですが、「森嶋」に関しては答えは「YES」です。

 

今回のブランディングの成功は、「作り手」「販売店」「デザイン事務所」3者の共創にあります。

(森嶋のブランド誕生についてのお話はこちらのブログ記事に詳細があるのでぜひご覧ください。)

3者とも同じ目標にむかって、ヒエラルキー無しにそれぞれの職能のもとにフラットに意見を交わしていった。

特に顧客に一番近いところにいる小野酒店の小野さんの販売店さんならではのマーケティング視点が重要でした。

つまり、売れる酒の条件、売れ続ける酒の条件、売れない酒の条件、最初だけで後が長続きしない(売れない)酒の条件など

販売店ならではのマーケティング視点をもとに、どんなデザインならそれらの条件をクリアできるのかを綿密に検証したのが「森嶋」のブランディングのアプローチでした。

おそらくクライアントである作り手(森嶋さん)とデザイナー(TRUNK)だけではここまでブランディングの精度をあげられなかったと思います。

この三者がチームとなり、徹底的に市場を意識しながらデザインの方向性を決めて行ったからこそ、現在の「森嶋」のブレイクにつながりました。

 

 

まとめますと、まず大前提として商品のクオリティが高いこと。次にその商品の世界観を魅力的なコンセプトにまとめる事。

次に顧客(ターゲット)目線でどんな売り方をすれば良いかを徹底的にリサーチすること、

最後に商品の世界観をどんなデザインで表現すればターゲットに届くかを考え抜いてデザインすること。

この一連の作業を高い精度で行うことができると、「デザインでモノが売れる」と言う結果が得られます。

 

今回確証を得たことの一つは、ブランディングをする時には、信頼できる顧客(ターゲット)、あるいは顧客(ターゲット)に一番近い存在の方の意見を取り入れる事の重要性。

今後ブランディングをお考えの方にはこれを強くお勧めします。

TRUNKのブランディングのカリキュラムにはこのアプローチ(顧客へのヒアリング)が含まれていますので、ぜひご相談ください。

 

 

ブレイクした「森嶋」の2020〜2021のシーズンは、昨シーズンより一ヶ月はやく仕込みに入り、生産量も増産するそうです。

そのためにタンクを増やす設備投資をされるとの事。

売れるとなると市場はその商品を欲しがります。つまり作り手優位で話が進められることになる。

そうなると増産しつつ供給をコントロールする事が可能になる。そうなると、シーズン初めにそのシーズンの注文を全部とれちゃうことになる。

(これまでは作りながら営業して注文を取っていくスタイルだった)

注文がシーズン初めに決まると言うことは、売上の見通しが立ちやすくなる。

売上の見通しが立ちやすくなると、次の設備投資もしやすくなる。

そうなると販路が拡大し、これまでよりずっと大きい市場での販売が可能になる・・・。

こう言うプランを、販売店さんと一緒に考えられるところも「森嶋」の強み。

 

そうやって会社は大きくなって行き、それにつれて販路もこれまででは考えられないくらいのスケールに拡大していく。

モノが売れて会社が成長して行くダイナミズムってこう言う感んじなんだな、と恥ずかしながら初めて実感しています。

 

蔵元杜氏の森嶋専務は「森嶋」が売れたことで起きた会社の変化について

「どんどん注文が入ってきて忙しいんだけど、従業員が本当に嬉しそうに働いてくれている。このまま好調なら雇用条件ももっとよくしてあげられる」と言います。

また、森嶋のブレイクに気を良くした社長の発案で、急遽一泊の慰安社員旅行に行かれたそうです。微笑ましい。

さらに、月一回東京の営業所から来る、お酒のラベル印刷大手の高桑印刷(本社石川県)の営業さんからは、

別のお客さん(酒造メーカー)から、「あの(森嶋)ラベルは高桑さんでやったのか?」とか、「あれはなんて言う紙に、どんな印刷をしたのか?」などと聞かれることが多く、

これまでの経験で、「そう言う反応が多い商品は大抵売れる、売れているんです」と言われたそうで、そんなところからも「森嶋」が市場に受け入れられていることを実感しているんだそうです。

 

良い物作りをして、それが市場に受け入れられ、会社が大きくなり、結果従業員が幸せになる。そんな好循環にデザインで関われることは本当に嬉しい事です。

TRUNKがやりたいことはまさにこう言う事なんです。

 

今後「森嶋」は海外展開も視野に入れていくとのこと。

このブログも「森嶋」を味わいながら書いています。

今シーズンはもう生産終了の「森嶋」。もしどこかの販売店で見つけたら即買いをお勧めします。

そのチャンスを逃したら、次に「森嶋」を味わえるのは今年の11月です。